AIエージェントは他人事じゃなかった
皆さまこんにちは!4月ですね。なんと前回の投稿から早3カ月も経ってしまいました。。。
実は、大変ありがたいことに、12月からプロジェクト型コンサルティングのご縁が数件あり、4カ月間に渡り事業開発やAIの世界に没頭しておりました。テクノロジーを通じた日本企業の成長に貢献する、というキャリア目標を具現化でき、やりがいに満ちた日々となりました。また、プロジェクトを通じてAIの社会実装における課題や可能性も肌で感じることができました。
同時に、会社員の仕事もこなしながらプロジェクトに責任を持つのは体力的に厳しいことも実感しました。皆さまとのニュースレターも疎かになり、申し訳ありません。2月には路面凍結で数日に渡り息子達の学校が休校になるハプニングもあり、毎朝アナウンスを見ては「終わった。。。」と打ちひしがれていました(笑)。
プロジェクトの期待に応えられたところで、今後はアドバイザリー業務を中心に注力しつつ、ニュースレターをはじめとした情報発信も再開していきたいと考えています。
「あなたの仕事を自動化して」
会社員の仕事にも思わぬ進展がありました。2月上旬にチームリーダーから「チームに欠員が出たので、その人の後継ぎをお願いしたい」との相談が。ふたを開けてみると、なんと自分を含め、オペレーションチームがやっている事務の仕事をAIで自動化するというミッションでした。前から勝手にClaudeとExcelで半自動化の試行錯誤はしていたので、「いつかは来るんだろうな」と思っていましたが、水面下では着実に事が進んでいました。美味しい時代もそう長くは続かなかったか。。。
それから久々にPMらしくサイエンティスト、エンジニア、ビジネスメンバーなどと議論しながらUI含めた要求定義をすると、色んな疑問や気づきが出てきました。
どれくらいの精度ならAIに任せていいの?何は人間が続けるの?
そもそも人間の精度ってどれくらい?ちゃんと監査してるの?
AIの精度はどうやって測定・モニタリングするの?
あれ、測定のためには実は人間が多少マニュアル業務を続けてもらった方が比較対象があってありがたい?
プロンプトは誰が書いて誰がマネージするの?テストはどう行う?
サンプル数をいくつ見ればプロンプトは切り替えていいの?
モデルのテスト・切り替えもできるようにした方がいいよね?
で、仕事が大幅に減るオペレーションのメンバーは今後何をするの?
要求定義を終えた今、「なるほど、こうしてありとあらゆる仕事はAIがこなしていくようになるのだな」と実感が湧いています。1年前にたまたま転がり込んだカスタマーサービス部門がAIで最も代替しやすい領域の一つだったのは何とも不思議な縁でした。
実際、AIエージェントプラットフォームのCrewAiは既にフォーチュン500企業の4割で導入され、Salesforceが2024年10月に提供開始したAgentforceも着実に導入が進んでいると聞きます。今週はMicrosoftとGoogleもそれぞれAIエージェントの機能を発表しました。人があらゆるエージェントを管理する時代は到来したと言えそうです。
今後はそれらエージェントを設計し、測定・テスト・改善する力が求められていきます。PM界でも「モデル評価(Eval)」が今習得すべきNo.1スキルと言われ、YコンビネーターのCEOは「Evalこそが企業の優位性(Moat)だ」と言います。人が時間をかけて習得した判断力をモデルに移植し、訓練することで、その力をスケールさせることができるからです。
AI訓練データを提供するMercorやScale AIは、経営者、弁護士など様々なプロフェッショナルもAIのトレーナーとして動員しており、AIは各分野のトップの知能まで身に着けていくことになります。
自動化の先にある未来は
上述の質問の最後に挙げた「オペレーションのメンバーは今後何をするの?」は、今のところ明確な答えはありません。基本方針として社員数は自然減(=辞めたら補充しない)としていますが、残るメンバーには何か新たな役割を与える必要が出てきます。
その時、恐らく、新たな役割に柔軟に適応できる人と、そうでない人に選別されていくのだろうと私は見ています。メンバーの中には、やる気があって、既に仕事の傍らサイバーセキュリティなどの勉強をしている人もいます。一方、そういった意欲がない人は、AIによる代替がまだ先の、体を使う仕事(販売員・作業員など)に就かざるを得ないかもしれません。
昨年700名のカスタマーサービス社員をAIで代替したKlarna(クラーナ)は、「タレントプール」という制度を作って社員の他部署への斡旋を行っていますが、「いつまで経っても異動先が決まらない『クラーナゲドン』だ」と嘆く社員の声も聞かれるようになりました。
年初に私は「なくなる仕事はあれど、より人間らしい仕事も生まれてくる」と書きました。身の周りに起きていることを考えると、実際にはそれに適応できる人とできない人の二極化が急速に進むのであり、社会にはそれに対する備えがないことを危惧し始めています。
私の母校ハーバードビジネススクール(HBS)でも、就職難が続いているようです。過去2年は景気の冷え込みが直接的な理由でしたが、今は企業が人よりGPUに資金を投下する傾向が鮮明になってきました。先日はShopifyのCEOが「増員の要請は、AIでそれができない理由を証明しなければ承認しない」と宣言し話題になりましたが、他社も事実上同様の方針を取り入れていると見てよいでしょう。
仕事がないのなら、創るしかない
現役ベンチャーキャピタリストでもあるHBSのブスギャング教授から、先日興味深いメールを受け取りました。「今年のテーマは『BUILD』(創造)。生徒90人全員に各々のプロダクトを作るようチャレンジを与えている。2025年は、HBSが、仕事探しではなく、仕事を創るスキルを生徒に教える学校へと転換する年だ。起業家精神や実験を重んじる、大学院にとっても大きな改革となる」と言うのです。
確かに、仕事がないのなら、創るしかありません。そのためには、新たなサービスや役割を、様々なテクノロジーを活用しながら構築していくスキルが益々重要になります。「アイデアや創造性、つまり本当に斬新なことを思いつき、複雑な方法で世界を理解することは、依然として人間の領域になる」とコーディングエージェントReplitのCEOは語っています。
また、向こう10~20年安泰な仕事としては、ロボティクスが挙げられるでしょう。先月のNVIDIAのカンファレンス(GTC)では、ロボティクスへの大々的な投資が発表される一方、パネリスト達はいかにハードとソフトを連動させるのが難しいかを語っていたのが印象的でした。莫大なニーズがありながら、実現までの道のりはまだ長いため、長期的なキャリアが描ける分野だと見ています。
一刻も早く我が家にロボットに来て家事・育児を助けてほしいのですが、当面は人力で乗り越えるしかなさそうです。とつらつら書いていたら、あと2時間で子供達が起きるので、今日はこの辺で。