米国最新AIツール特集

今日は、米国でプロダクト作りに使われているAIツールを紹介したい。

インターネットもスマホ・GPS・通信速度など基本インフラが整ってからUberのようなアプリが登場したように、AIの世界でもモデルやインフラが進化するにつれ、実現できるアプリケーションがどんどん増えていくと考えられている。「我々はAIに仕事を奪われるのではなく、AIを駆使する人に仕事を奪われる」という見方が定着しつつある中、ChatGPT・NotionPerplexityのような代表的なツールの他にはどんなアプリケーションが存在するのか、手を動かして見てみたかった。

実際、触れてみると、顧客の口コミ収集や行動分析、データ分析・図式化、A/Bテストの設計など、日々時間を取られる業務がこんなに楽になるんだと驚いた。一方で、「あれ、議事録なんて、もうZoomもCopilotも作れるんじゃなかったっけ?」と感じるアプリもあり、日進月歩のAI業界では、いかに大手が攻めない領域で価値を築くかが大事だなと再認識させられた。

予めお詫びしておくと、ご紹介するツールはUIがまだ英語版しかないものが殆どだ。但し、その分日本に浸透していないので、使えばより優位に仕事を進められると思う。また、これらツールの動向を得られることで、日常業務の進め方を考え直すヒントになるかもしれない。ツールは一般的なものから専門的なものまで様々なので、より万人に使えそうなものから始め、徐々に専門的なものを紹介していきたい。

顧客の口コミ収集・行動分析・示唆抽出

顧客の声を拾い、彼らの行動を分析し、そこから示唆を抽出するのはビジネスリーダーの根幹業務だが、いざ集めようとしたら情報源がバラバラだったり、分析の時間を捻出するのが難しかったりする。以下のツールはその過程を楽にしてくれる:

kraftful.com

Qualtrics, Slack, Salesforceなど様々な場所に散乱している顧客の口コミを集め、その文章を読み込んで最も頻繁に見られる苦情や悩みを抽出してくれるツール。何回その類のコメントが出現したのかも見られるので、優先順位付けにも役に立つ。(デモ動画はこちら

sprig.com

自社プロダクトと連携することで、その体験過程でフィードバックをもらう場所を作ったり、ユーザーがどこでどう操作したかまで再生することができる。一般的には、ユーザーがどの画面で利用を放棄したは把握できても、そこで何に困って進めなくなったかまでは分からないので、それを実際に見ることができるのは非常に画期的。(デモ動画はこちら)

fillout.com

Qualtricsのようなアンケートツールをもっと身近にした感じのもの。顧客のアンケートは勿論、忘年会の出欠連絡から、緊急連絡先の記入、面接の時間の選択など、誰かに何かを記入(Fill out)してもらわないといけない時に簡単にフォームの作成と集計ができる。(デモ動画はこちら

notably.ai

顧客インタビューの動画や録音データをツールに突っ込むと、勝手に分析と示唆抽出をやってくれるツール。顧客に限らず、社員やエキスパートなど複数人に聞いた内容をまとめる時に役立ちそう。(デモ動画はこちら)

データ分析

データ分析と言えば若手ビジネスパーソンが価値を出せる鉄板の業務だが、それもどんどんAIツールで会話やビジュアルにできるようになってきている。

julius.ai

パーソナルAIデータアナリスト。あらゆるデータを突っ込むと、会話形式でデータの分析と視覚化をしてくれる。でもGPT-4oの進化を見ていると、もうこれもChatGPTで済ませられる(あるいはその日が近い)気がする。(デモ動画はこちら)

kater.ai

これも同様に、会話形式でデータ分析をサクサクとやってくれるツール。SQLのクエリもガンガン書いてくれる。こういうツールを見ると、SQLは引き続き知っておくのは大事だが、自分で書けなくても、内容が分かれば良いレベルになってくる気がする。(デモ動画はこちら)

rows.com

このツールは、会話に加えてビジュアルにデータをドラッグ&ドロップしたり、それを簡単に視覚化したりできる。データ分析に慣れていない人が簡単に討議資料を作成したりするのにとても役に立ちそう。(デモ動画はこちら)

lucite.ai

M&Aバンカーが提案時に作成するような財務・企業分析を、一瞬で作ってくれるツール。現時点では米国上場企業しか対応していないので、誰か日本の上場企業とか帝国データバンク版を作って欲しい。米国上場企業の調査をする時は是非おススメ。(デモ動画はこちら)

UXデザイン・マッピング

提案したいサービスがあったら、手書きはできても、そこからはデザイナーがいないと無理。。。というのが一般的だったが、今ではドラフトならデザインもそのコードも作れるツールが登場している。

uizard.io

手書きデザイン、スクショ、又はテキストからでもモックアップのUIを作れてしまう。気に入ったデザインが作れたら、そこから細かく修正することも可能。「こういうものが作りたい」というビジョンの共有が各段にしやすくなりそう。(デモ動画はこちら

miro.com/assist

様々なマッピングを簡単にできるツール。ユーザー体験フロー、かんばん方式、システム構造、ロードマップなど、あらゆるテンプレートを活用してそれをカスタマイズできる。(デモ動画はこちら)

visily.ai

テキスト→図の生成や、スクショ→デザインの土台としてそこから作業を開始するなど、初期のデザイン業務を加速化させてくれるツール。ある程度仕上がったらFigmaへのインポートもできるので、ドラフトを仕上げまで使えるのが魅力的。(デモ動画はこちら

amplitude.com

顧客の行動分析を、デザインの観点からよりつぶさに見られるようにしたツール。電通グロースハックプロジェクトの特集にも挙げられており、広まれば日本のソフトウェアのUIが大幅に改善されるんじゃないか。。と期待してしまう。(デモ動画はこちら

tldraw.dev

こちらは、描いた顧客体験を、すぐに使えるコードに変換してくれるツール。プロトタイプを素早く作りたい時に役に立ちそう。(デモ動画はこちら

実験 (A/Bテスト) ・データマネジメント

人の勘に頼らずに、あらゆるアイデアを実験することはプロダクト作りの肝だが、そのインフラが整っていない企業は多い。(恥ずかしい話、私が所属していたAmazon Adsの事業部も、インフラ導入までにかなりの時間と労力を要した。)意思決定を加速化する上で欠かせない実験やそれに関わるデータマネジメントも、第三者のツールでできるようになりつつある。

statsig.com

機能のアクセス権限、A/Bテストの管理、顧客行動の再生が全て一つのプラットフォームでできるツール。新機能導入時に、想定通り機能が動作しているか、それは顧客に本当に価値を提供しているかをテストするのは非常に肝な過程なので、それをサポートしてくれるのはかなりありがたい。Microsoft, OpenAI, Notionなど名だたる企業が使っている様子。(デモ動画はこちら

gretel.ai

機械学習に使う顧客データが秘匿化・匿名化されていないといけないのは言うまでもないが、そのための処理には手間がかかる。単に名前や住所を削除しても、他データの組み合わせから個人が特定できるリスクが高まっているため、gretel.aiは元データの特徴量や統計分析が類似する合成データを作成することで企業がこの問題に対応できるようにしている。(デモ動画はこちら

資料作成

パワポ資料作りもまた、重要だが手間のかかる作業だ。これが簡単にできるツールが登場しつつある。Microsoftも当然Copilotに搭載してくると思われるので、個別ツールと比べてどちらが便利になるかは様子見だが、今市場に出ている例を紹介したい。

tome.app

営業やマーケティングのメンバーが、サクサクと資料を作るためのツール。テンプレートやカラーの統一は勿論、テーマを文章で記入したらそれに沿った構成のスライド集ドラフトを作ってくれる。(デモ動画はこちら

gamma.app

こちらのツールでは、豊富なテンプレート集から好きなものを選び、AIと会話しながらスライドのコンテンツ作りや色・フォントの変更などができる。また、スマホ等様々な画面サイズにも自動で資料が調整されるようになっている。(デモ動画はこちら

コミュニケーション

会議での喋り方を評価してくれたり、自動で議事録とネクストステップを作ってくれるツールなどがある。このあたりも、Microsoft Teams Copilotのデモに出てくるような機能なので、Microsoftが巻き返してきたら不要になるのか、あるいはスタートアップが彼らの先を行き続けるのかは気になるところだ。

yoodli.ai

プレゼンの練習をこのツール相手にやってみると、様々な観点から喋り方のアドバイスをくれる、個人的に嬉しいツール。つなぎ言葉やアイコンタクト、ペースなどを採点してくれるので、自分が気づかない癖を直すのに役に立ちそう。つなぎ言葉を減らす、物語を伝える、等特定の目的に沿った練習もできる。(デモ動画はこちら

otter.ai

こちらはAIブームが到来する前から存在していた、会議録音→議事録アプリ。久しぶりにチェックしたら、会議内容についてチャット形式で質問ができる等、さらにレベルアップしていた。(デモ動画はこちら

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